名産〔肥後ずいき〕の名は古来人口に膾炙せし所にして
往昔藩主より代々将軍へ献せられ
又参勤交代の折りなど藩主はこれを江戸への土産として
江戸人士の賞賛を得せしものなり
蓋し〔肥後ずいき〕は食して美味なるのみならず
質柔軟にして強靱、軽く且つ美しきが故に
婦人の髪飾、手芸材料等に用いし外いとも興味深き
用途を知りたるによるべし
昔はまた〔ずいき〕の薬効を信じ
大阪にては珊瑚の古血を下すとて
出産のある家へこれを見舞い品として贈る風ありしと云ふ
元禄の頃の川柳に
よかるはず これは九州肥後の国
さなきだに肥後を用いて持てあまし
等〔肥後ずいき〕を題材として諷したるもの頗る多きを見るも
昔より粋人の間に愛用されたるは
察するに難からざるべし
かく〔肥後ずいき〕が幾百年の昔より人口に膾炙せられ
広く江湖の愛用を得たるは
本品が如何に興味深く情味豊かなるかを
実に物語る証左と言はざるべからず
〔肥後ずいき〕の製造は弊店元祖によりて創設せられ
往時藩公の御用命により
代々之が製造に従事し永年改良に改良を加え
入念情報に努めたるを以て
現今天下無頼の讃棒を得るに至れり
願わくば乞一度ご使用ありて
忘れがたき〔味わい〕を御試しあらん事を